これ以上ないってくらい「欲しかった」夜

店を出ると、もう朝だった。
一晩中飲んで歌っていたなんてちょっと信じられない。
若い連中と同じようにやってると体がもたないよって考える余裕もないくらい、僕は求めていたのかもしれない。今の生活に欠如しているものを。
彼らの中にいて、「そういう気分」に浸っていると、思わずよりかかってしまいそうだ。
残り少ない理性を総動員して、ちゃんと「ひとりで」帰ってきた。コンビニにも寄らず、胃をびっくりさせることもなく、服を着たまま寝ることもなく、大切な日曜日を棒に振ることもなく、こうしていつも通りでいる。
ホントは、違う。
あのぬくもりをずっと独り占めしていたかった。それは無理なこととわかっていても、酔った勢いだって知ってても、僕が本当に欲しかったこころの平穏を、この殺風景な部屋まで連れて来たかった。それで何かが壊れることになっても、「朝が来れば」全てリセットされてるから大丈夫っていつものセリフも、朝陽の中では通用しないよね。きっと重い後悔が残るだけだから、だからさっと手を上げて、僕は右へ、キミは左へ、川は交わることなくそれぞれの海へと流れていく。
どんな言い訳も通用しない社会の掟の中では、そのルールを破るところに見出す快感や、危険な遊びや、刹那的だけど刺激的で、本能が目覚める瞬間の「落ちていく」感覚に酔いしれるその時だけ、生きているって感じられるなんて、虚しい、かな。ああ、そうだ。空腹を満たすために全速力で獲物を追うチーターのようだ。なぜ走るのかなんて考えない。
考えたら、そこで止まってしまう。

夜は考えることをどこかに預ける時間で、朝はそれを引き取る時間だった。

店を出た時が夜だったら、僕はキミの手を離さなかっただろうな。

※記憶がないってことにしておこう。
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by ten2547 | 2005-05-22 11:22