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大切な日

新幹線を止めた少年がいる。
大学入試の当日、乗った列車は目的の駅には止まらなかった。
このままでは試験に遅刻する。
それがミスをした彼に与えられた試練のはずだった。
だけど「親切な大人たち」のはからいで、止まるはずの無い駅にその列車は停車し、彼は試験に間に合った。めでたし、めでたし。

新幹線の運行には影響がない、安全も確保された、ひとりの若者の人生を救うという美談のようにも聞こえるけれど、この列車は3分遅れで東京駅についた。
この3分で人生の大切なものを失った人はいないのだろうか。定時運行が新幹線の果たす役割とすれば、この3分は許されないのではないだろうか。
しかも彼は「母親」と一緒だったのだ。大学入試にお母さんと一緒..
せめて一人で乗っていて欲しかったな。

過剰な支援は彼のためにはならないと思う。
新幹線は止まるべきではなかったのだ。

大学入試のとき、僕は試験会場まで事前に足を運び、完璧に準備した、つもりだった。
乗る電車も、乗り換えの方法も「初めての東京」だったから何度も確認した。
当日、東京は大雪だった。
交通は大混乱だ。全く予想もしないことが起きるのが人生だ。
頭の中はそれこそ真っ白になった。
僕は遅刻はしなかったけれど試験開始は1時間遅れになった。

僕のために誰かが何かをしてくれるとすればそれは有り難いに違いない。
何とかして欲しいと願うこともあるだろう。
助けて欲しいと思うこともあるだろう。
でも、たいていの場合それはどうにもならない。
自分のミスなら自分で解決するしかない。
彼はそのことを学んだ方が良かったのかも知れない。
この先、もっと大変なことがあっても誰かが何とかしてくれるなんて思ったら、それこそ、不幸だと思う。

人生で一番大切な日なんだったら、なおさら失敗は許されない。
僕も数え切れないくらいのミスを犯してきた。
自分のせいだったこともあるし、不可抗力だったこともある。
結果がどうあれ、それはそれでよかったのだ。
あの時、救われていたら、今の自分は存在しない。

彼が無事合格することを願う。

by ten2547 | 2005-02-06 10:14