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心和譚

ココロナゴムひと時は不意に訪れた。

何の計画性もなく、全くの気紛れで、フラッと出掛けた街で、僕は無になる。
日常というシガラミと、平凡というヌケガラを捨てて、多少は、ほんの少しは自分を解放して、そしてその反面、誰にも見せない表情で世間に背を向ける。
なんだかんだ言っても、所詮その範囲を出ることはなく、ただ、現状よりは遥かに僕を包み込んでくれる都会の闇の優しさと懐の深さ、煩わしいほどの客引きのようなその他大勢感に浸る、ヨロコビ....嫌いじゃないだろ?当然のごとく首を縦に振る。

次第に気分は高揚する。
こんな単純な自分なのに、また事態を複雑怪奇にしようとアンテナを立てる。
何にもないことはわかってる。
ナンにも無いからいいんだ。
何も、怖いものないじゃない。
もう、道も覚えたし、未知へ向かって最初の扉を開けた。

仁義を切ったつもりだったのか。
本当はストレートに「会いたい」と言えばいいものを、弱腰の建前と自分勝手な本音が、おひけェなすって、と慣れないことをさせる。
来てくれるといいな、でも無理だろうな。ボールを投げてみて、その行方を追った。
ひとしきり心拍数が落ち着いた時、球は直球で返ってきた。

若者とタバコの煙でむせ返るような店内で、僕は「借りてきたネコ」(というか殆ど招かれざる客)状態で埋没していた。酔ってなければ泣いて家に帰っていただろう。
思考回路が鈍くなっていた分、感性も鈍になっていたのがかえってよかったのかも知れない。自分がどう映っているかとか、どんな風に見られているかとか、考えなくても良かったから。でもそれは僕にとっての価値観に過ぎず、どこか不躾で失礼な態度につながっていたことは十分考えられる。そんなこと=僕の悲惨な状況を心配してくれている人がいることなんて考えもしない、厚顔無恥....

自分勝手でわがままなどうしようもない自分、を見た夜でもあった。
時間の経過とともに、僕は頭を抱えてしゃがみこむ。
素直になれば、ありがとう。
卑屈になれば、ごめんなさい。
そんなこんなをひっくるめて西に向かって頭を垂れる。


※人の温かさに触れて恥を知る。

by ten2547 | 2008-09-29 22:04 | 白書