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「お客様、申し訳ございませんが、ご予約のお部屋がただ今満室でございまして...」

チェックインを待つ僕らにそう彼女は告げた。
え!?またしてもトラブル発生?ここまで順調だった旅に暗雲が垂れ込め始めた。

何かしら問題が発生するのは慣れっこになっていたけど、ホテルの予約がオーバーブッキング?というのは初めてだったし、ましてやここは五つ星でしょ?有り得ないよ~と楽しい気分が吹っ飛びそうになったその時、彼女は言った。

「それで、別のお部屋をご用意致しますので3時間ほどお時間をいただけませんでしょうか。」
彼女が言ったその部屋は2ランク上だった。

シーズンオフの今でも1泊3万円以上、ハイシーズンには7万円を超える部屋にしてくれるというのだ。ええ、待ちますとも、3時間だろうとお安い御用で...(とたんに低姿勢)

では係りの者がご案内致しますのでこちらへどうぞ、となぜか外へ案内される。
どうやら別棟になるらしい。ゴルフ場にあるようなカート車に乗り込みその別棟とやらへ向かう。微妙な距離を移動して到着すると、再度部屋についての説明があった。しきりにとてもいい部屋であることを強調している。だから僕にはこう聞こえた。

『ここはお前らのような卑しい輩が泊まるようなところじゃないんだ。こちらのミスでしょうがなく、ホントにこの部屋しかあいてないから仕方なく泊めてやるんだ。あり難く思えよ!クショ~』
かなりの僻みが入ってはいるものの、別に僕らが悪いわけではないし、かえってどんな素晴らしい部屋かと期待が高まった。しかも3時間かかるところを1時間で用意するとのこと。ちょうど昼時だし、近所を散歩してご飯食べて戻って来ようということになった。

さて1時間後、部屋へ案内された。
特にどうということはない、普通の部屋だった。ただ、テラスの前にプライベートデッキとジャグジー、シャワーなどが設置されていて、要するに部屋から直接プールに行けるようになっていた。何だ。それだけか...
これなら香港でグレードアップしたセミスイートの方が遥かに豪華だったな。特別広いわけでもなく、ベッドもキングサイズとか言ってたのにフツーだし...リゾート地だからプールがプライベート感覚に使える方が価値があるのか。ま、僕の興味を惹くものではなかった上に、考えたら外から部屋が丸見えだし、防犯上もよろしくないじゃない。と何様のつもりか文句まで言い出す始末。

それでもせっかくだから水着に着替えてちょっとはしゃいでみたものの、10分で飽きる。子供がプールで騒ぐ声がやかましい。プールサイドバーを利用するにはプールの向こう側まで行かなきゃいけないし、その間、自分の部屋は扉が開きっぱなしじゃないか。飲み物持ったままプールを横切って戻ればいいの?
ああ、やっぱり自分は卑しき身分の者。こんな部屋を楽しむ余裕などないというわけね。きっとここに泊まる人はルームサービスで注文するんだろうな。落ち着かず悶々と過ごす。

やっぱり僕はビーチで寝っ転がる方がいいや。
結局その素敵なプライベートデッキを使うことはそれっきりなかったのでした。


※身分相応、普通が一番
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by ten2547 | 2008-08-17 23:07 | 旅行