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幻想~内臓の飛び出た残虐さの中の幸福~

隣の部屋でたった今、人が解体され、その瞬間どこかで新しい生命が誕生し、飢えた子供があばら骨をむき出しにうつろな目をして海を眺めている。限りなくセコイ大人が領収証の金額を誤魔化したり、もてないオトコが金を巻き上げられても懲りずに刹那の快楽を求めてさまよう。
そんなぐちゃぐちゃした世界と隣り合わせにこの世のものとも思えないほどの美しさが横たわり、優しさと愛情に満ちた幸福が神々しく包み込んでいる。それは作られた世界かもしれないが、全てが嘘と言うわけでもなく、信じれば救われるの図式で互いに騙されあっていれば成立する一見成熟した大人の社会で、例え背中にナイフを隠し持っていようと、自分にさえ害が及ばなければ良しとする極めて人間的な世界でもある。これほどたくさんの喜怒哀楽とこれほど多くの事件事故が多発する社会の中で無傷で生き残るのは至難の業だ。今日一日何事もなく過ぎたなどと安堵している場合ではなく、もしかしたら大切なものが消えてなくなっているんじゃないかと疑って、間違い探しの絵よろしく、昨日と今日との間にある相違を見つけ出すことも必要なんじゃないか。誰かが自分の世界に密かに侵入している可能性だってある。それこそ隣人は殺人者で、にこやかな笑顔なんて何の信用にもならないことを自分自身が一番良く知っている。だって犯人は自分だからね。血眼になって探しているその人は記憶をなくした過去の自分で、それを覚えていない自分はテレビで見て初めて知ることとなる。自分が行ったところと自分がしたこと、その罪深さとその浅はかさと、それでいて偉業を達成した充実感も加わって、へえ~とか言いながら今日も何事もなく平和な一日だったとカミサマに感謝しつつ眠りにつくとしよう。


※そしてこの瞬間もどこかで誰かが殺されて、地球の反対側で赤ちゃんが誕生する。
  

by ten2547 | 2008-06-07 01:03 | 放言