難波のことは恥のまた恥

それは突然目の前に舞い降りてきた「天使」だったのです。
僕は、あるいは「僕たち」は身を乗り出して彼の話に聞き入ってました。もしかしたら「僕たち」は、彼に恋してしまったのかもしれません。いや、絶対にそうです。
少なくとも、僕は、彼の全てをその場所に留めておけるならば、その引き換えに自分が去っても、つまり全てを捧げてもいいと、そう思っていました。
それは、恋。まさしくそのものだったのです。
四角い部屋で。
みつめ合った瞳のことは、生涯忘れません。
また彼に別の立場で出会えること、それだけを僕は祈っていました。
職務を忘れて。
職権を超えて、越えて...
公私混同も承知の上で、彼を望みました。欲しました。
そこでお願いです。
カミサマへ、どうか彼が再び僕の前に舞い降りますように...
あの天使の微笑みに出会えますように...

そんな状況の中、僕は前夜の痴態を反芻してました。
それはこの無味乾燥な人工物とは対照的な、その奥の奥に存在する、本性、でありました。

グラスに注がれたスパークリングワインを見つめながら、僕は自分が不思議な物語の中に舞い込んでいることを実感できずにいた。なぜ、自分はここにいるのだろう?
初めて会った人なのに、ずっと前からの友達のようにナレナレシク、聞かれもしない愚話を臭い息とともにとめどなく吐き出していた。そうだ、それはあの「穴」だったのだ。
「王様の耳」に関することを僕はその穴めがけて100連発で送り込んでいたんだ。
決してお酒に酔っていたんじゃない、と思う。時間が来たら魔法が解けてしまうから、朝が来たら全部溶けてしまうから、僕は目の前にいる大男めがけて突進して行った。

相手の立場に立って考えましょう。
そんな講話をもっともらしい顔でシテイル自分は、全く人のことなど気にしない、わがまま、身勝手、空気など読む気はサラサラない、厚顔無恥であることを恥じることない不埒な輩にあこがれて、どこまでも、どこまでも舞い上がって行きたかった。
不良になりたい、と思っていた。
15の時からだ。
そんなどうでもいい話をずっと聞かされた人は、きっと後悔しただろうな。僕に会ったこと。

課題は山積みで、問題は先送りで、でも、そのひと時は僕にとって何より楽しい時間だった。だから、ほんのちょっとだけこころの紐を緩めてみたんだ。
いいよね、これくらいだったらさ。
結び目が固くてなかなかほどけなかったけど、難波のノリは死ぬほど楽しく、自分のDNAが目覚めるのを感じたよ。僕がもともと持っていて、日頃は胸の奥深く隠している素性が解凍されてサラサラと流れ出てきた。
そういう時の自分を、ずっと待っていたのは自分自身だった。
やあ、久しぶり。
そう言って注いでくれた、魔法の液体を僕は一気に飲み干した。

そんな時間をくれた人に、そんな僕に付き合ってくれた人に、感謝。
もう一度、感謝。


※全部覚えているから大丈夫
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by ten2547 | 2008-04-06 14:41 | 戯言