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霧の中

朝から深い霧に包まれた街を見下ろす。
さて、僕はどこへ行こうか。
大都会の冷気を浴びて、百万年の孤独ごっこもいいな。
汗をかくほどの暖かさの中、低温やけどに近いシアワセに浸るのも悪くない。
さんざん人の悪口で盛り上がる了見の狭い人種と一緒にいると、自分まで同種と見られそうでたまらない。
そんなに他人の幸せが妬ましいのか。
いいじゃないか。ひとのことは。
放っておけばいいんだ。
僕等には関係ない。

霧の中、手探りで求めたささやかな幸福は、ほんの少し指先に触れたような気がしたけれど、あまりの眠気に揺らぐ頭では到底正確に把握することなんかできなくて、ただ、激しくファックされることだけを望んでいることを、それだけに意識を集中させれば、答えは簡単だった。
愛とか恋とか優しさとかそんなのどうでもいい。
その時の僕の性欲を満たしてくれるものがあれば十分だった。
甘ったるい時間をすっ飛ばしてホテルに直行した。
これだ。僕の欲しかったものは。
肉を貪った。
「マシーン」を飲み込み、「マシーン」の快進撃に昇天した。
「マシーン」は完璧だった。
完璧にプログラムされたメニューをこなした。
鏡に映った己の痴態に、生きている、と感じた。
同時に醜い、と思った。
でも、それが一番望んでいたものだから、僕の口は半開きで、聞いたことのない喘ぎ声を漏らしていた。
動物だった。
ケモノだった。

霧はまだ晴れない。
今夜もまた、自分の心の声に従って、突然新幹線に乗ってみたりしよう。
その先にあることについては何も考えず、何も期待しない。
そうすることが大切だ。
ここにいるよりはマシ、だから。

朝になったら、きっと霧は晴れているだろう。


※もう一度お願いします。

by ten2547 | 2008-01-12 12:45 | 青筆