そうやってうしろから抱きついた。

とあるJRのローカル線、車両は2両、ワンマンカー、無人駅に滑り込んできた。
これでいいのかな?
方向はあっているはず、でもちょっと不安なので車掌(運転手?)さんに聞いてみる。
これは○○に行きますか?
はい、行きますよ。
えっと、切符はどうすれば?
あ、ここでお願いします。200円です。

爽やかな笑顔で小さな紙切れを手渡してくれた。
いろいろあって気分が沈んでいたので、彼の対応が(とても普通のことなのに)とても嬉しかった。これで家に帰れる。そう思うと疲れがどっと襲ってきた。
2駅目で下車し、乗り換える。
着席すると同時に眠りに落ちる感じで座席に沈み込んだ。
何が何だかわからない感情に全身が包まれ、身体が鉛のように重かった。
自分の存在そのものが疑わしい。
そのまま闇に葬り去られてしまいたかった。

小さな子供の声で目が覚めた。
向かいの席にパパと坊や、隣の席にママとお嬢ちゃん、4人家族が分かれて座っている。
一瞬席を替わってあげようかなと思ったけど、向かいの父子がとてもステキだったので、そのまま僕の正面においておきたかった。
パパは(疲れた様子で)目を閉じたまま、でも、息子の頭をずっとなでている。
息子は右手をパパのふとももの上に置いて、身体をぴったり寄せてちょこんとシートに腰掛けている。ああ。何て平和で美しい風景だろう。
息子はその内大きなあくびを繰り返し、いつの間にかパパを枕に眠っている。
若いパパと小さな息子は仲良く眠りについた。
どちらもすごくかわいい。
僕は、そんな二人を時々視界に入れながら、ぐちゃぐちゃのこころを少しずつ静めていった。

僕の「パパ」は、こっちを向いて笑っていた。
あの小さな子供のように寄り添い、彼の体温を感じていたくて、うしろから抱きついた。
こんな子供は嫌だろうけど、彼は快くそれを許してくれた。
それがとても嬉しくて、でもこのままずっとそうしていたいのを抑えて、雨の街をあとにした。
傘を持たない彼が、走っていくのが見えた時、ちょっとだけ後悔した。
ほんの少しだけ...


※雨に感謝して、日曜日。
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by ten2547 | 2007-09-30 10:53 | 戯言