神の手

いつもの「美容院」を予約する。
1ヶ月に一度の単なるカットだから特に担当も指名しない。

「○○様、お待たせしました。」
昨日は若い男性だった。あ、前に一度やってもらった人だ。

慣れた人だととっとと仕事に取り掛かるけど、彼はまだ経験が浅いのか、丁寧に僕の好みを訪ねてくる。それほど注文することもない僕はちょっと面倒だなと思いつつ、鏡の中で彼と目線を合わせながら会話する。トップは長めでサイドとバックは短めに、バリカンは使わないでハサミでお願いします。僕の髪を触りながら彼なりのイメージを思い描いているんだろうか、僕の髪にそれほどのものは無いとも思うが、全て彼にお任せする。
それでは切っていきますね。

それから約30分
僕は彼の仕事を眺めるフリをしながら、ちょっと別の感情を抱いていた。
彼が僕の髪を切る。
彼が僕の髪を洗う。
彼の手が僕に触れるたびに、その感情は膨らんでいく。
丁寧に丁寧に仕上げていく。
きっとお店的には時間かけすぎ、お湯使いすぎ、でマイナス評価なんだろうけど。
僕は嬉しかった。

たぶん僕の注文以上に短くなっていただろう。
でもそんなことは構わない。
僕の抱いた感情は僕をほんのりとした幸福感で満たしてくれたから。

もう一度彼の手に委ねるには、名前を聞いて指名すればいい。
でも聞かなかった。
また偶然出会えればそれでいい。

最後に飛び切りの笑顔で見送ってくれた。
仕事だから当たり前だけど、僕も笑顔で応えた。


※つまらない、下らない、どうでもいい、ちっぽけな日常
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by ten2547 | 2007-06-03 09:18 | 日常