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『相席』~初めは満席だったんだ~

「ここ、空いてますか?」
お気に入りのカフェ。海岸通りに面したテラス席は満席で、僕の隣だけが空いている。
「ええ、どうぞ」
短い会話の後、僕と彼は同じテーブルをシェアすることになる。

夏の日差しもそこだけは柔らかく揺れる木々の作る影で優しく、海からの風も心地いい。
しばらくして、ふと見渡すと、他の席は食器だけが置かれ、僕らだけがそこにいた。
彼は読書を、僕は日記を書いていて、どちらも別の席に移動することもなく、
何か話すわけでもなく、時々通りを行く幸せそうな人たちや、椰子の木や、青い海を眺めては、コーヒーカップに手を伸ばす。
まるで友達のように、恋人同士のように、同じテーブルで、同じサイズのカップがふたつ...

満席で始まった相席。最後はチョッと気恥ずかしい時間、そして僕には少しだけ幸福な時間に。


※遠い思い出

by ten2547 | 2007-02-10 08:08 | 回顧