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深夜の号泣

まずい酒に酔うことも出来ず帰宅した僕を待っていたのは、あの誘涙の旋律だった。

もう一度観ようと思ってそのままになっていた。

小説を読もうと本屋で手にした上下巻のボリュームに躊躇した。

それでも僕の中ではベストの映画が、深夜の枠で始まった。

『サイダーハウス・ルール』

終わるのは4時過ぎだな~と思いつつも、さっそく涙を流していた。

そこに登場するのは、「正しくない人々」ばかりだ。
違法で非人道的で不倫で詐欺で詐称で不貞で、この世のありとあらゆる「道を外れた」とんでもない人ばかりが登場するのに、だれも悪くはない。全て正しい。間違っているけどそれでいいのだ。
そしてあの哀愁に満ちた音楽と子供達の笑顔が更に全てを正当化し、だれも、社会の掟によって裁かれたりすることのない緩やかな癒しが、僕を号泣させるのだ。本当に声を上げて泣けるのだ。

果樹園農家の労働寄宿舎に張られた一枚の紙には、彼ら労働者に向けてルールが書かれている。その内容は実に下らないものだけど、最高に滑稽なのは、彼らの誰もが文字を読めないことだ。
僕らの社会も似たり寄ったりかもしれない。
数え切れないほどのルールが存在するけれど、毎年たくさんの法律が制定されるけれど、その全てを把握している人はいないだろう。その掟にしばられ、地べたを這いつくばって生きる我々平民は、「文盲の労働者」と同じく、その存在さえも知らずに、だけど平穏に日々の生活を送っている。つまりは自分の知らないうちに法を犯し、人道に外れることがあったとしても、身近なコミュニティに受け入れられていれば、それは問題なし、なのだ。

ルールは住人が決める、んだよね。

この映画の登場人物を社会の掟でくくれば、物語は10分で終了し、みんな刑務所行きだ。

でも、何の問題もない。

社会にはそうした「のりしろ」が必要なのかもしれない。

特に弱者にとっては...

※僕ら、少数派にとってもね。

by ten2547 | 2006-10-01 12:03 | 映画