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母の慟哭 父の無念

バックミラーに映った光は、まるで宇宙の彼方からやってきたように、その速度を緩めることなく見る見る間に大きくなった。
次の瞬間、車は宙を舞った。

暗い海の中に沈んでいく命を絶対に失うまいと、母は何度も潜り、幼い手を固く握り締めた。
酸素のない世界でどうすればいいのか、大人にだって咄嗟にはわからない。
息が出来ない恐怖と、何も見えない絶望と、叫びたくても声も出せない衝撃が、さっきまでそこにあった普通の生活を奪い去り、そして、二度と戻らないはずの過去のその以前へと無理やりに一家を引き戻していった。
「宇宙人」は、その様子を人ごみに紛れて眺めていたそうだ。
自分が何をやったのかをはっきりと意識していたから。
ウソをつき、再び宇宙船に乗って安住の地に戻ることばかり考えていた。
自分が犯した罪の重さと、自ら奪った無辜の魂の尊さに、これから一生かけて向かい合っていくこと、たった一時の快楽の代償として、どうしたって償うことなど出来ないものがこの世にはあること、それをいとも簡単に自分が引き起こしたことを、真正面から受け止めなければならない。

制限速度には意味がある。
飲酒運転が犯罪であることは人の命を天秤にかけなくとも容易に理解できる。
彼にそれができなかったのは、未熟だったから?愚かだったから?傲慢だったから?
自分だけはいつだって大丈夫なんだ。
でも、それは違う。
違っていた。

※気がついただろうか?「それ」は常にそこにあるということに。もう、遅いけど..

by ten2547 | 2006-08-28 23:15 | 社会