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秋雨

電話が鳴る。
僕は出ない。

映画の主人公はシナリオ通りに話し、動いているようで、実はそうではなかったりする。
フィクションのように見えて、そこでは実際に血が流れているのかもしれない。
カメラは追いかける。
そのカメラを別のカメラが狙っている。
演技はしているのではなく、させられている、ようで演技ではない、かもしれない。迷路の中に入り込んだストーリーは出口を求めて「迷走」し始める。

振り返ると、雨が降っている。
ここのところ週末になると天気が崩れてる。
もう一度振り返ると、もう部屋は真っ暗だった。

再び電話が鳴る。僕は、出ない。

気がつくとあたりはしんと静まり返り、自分の耳の奥で単調なノイズだけが響いている。
何の気配もしない。この部屋には時計もない。そうだ、何もない。
どんよりとした重たく冷たい空気がかたまりとなって流れている。昨日の雲ひとつない空がうそのように、明日も、明後日も、何も変わらないことを告げている。

もう電話も鳴らない。僕もかけない。
そこから何か始まるかもしれないけど、始まらなくてもいい。
神のお告げも、下らない占いも、ここでは何の役にも立たないだろう。
崩れた体調を睡眠とビタミンCで回復した。あと足りないものはひとつだけだ。
電話をかければ手に入るかもしれない。
たぶん手にすることができるだろう。たいした手間じゃない。お金もかからないに違いない。ある「状況」が作り出され、新たなシナリオに沿って物語りは続いていく。
でも今日はここでおしまいだ。

雨が降ってきた。それを理由にしよう。
明日は仕事だから。それも加えよう。
その気になれないから。それはココロの中でそっと呟くとしよう。
それを自分の殻に閉じこもっているだとか、理想が高いだとか、暗いだとか、何とでも表現できるだろう。今日は、そんなに悪くない。むしろいい方だ。
きっといい映画に出会ったせいだろう。

17:00
終わりを告げるベルが鳴る。
社会がその色を変える時刻に、僕もまた自分を変えるとしよう。
明から暗へ。暗から闇へ。
一番居心地がいい場所へ。

鏡に向かって笑顔作ってみる。

※鏡よカガミ、世界で一番醜いのは、だ・あ・れ?

by ten2547 | 2005-11-03 17:05