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終わらない夏

9月も終わろうとしているというのに、僕はまだタンクトップに短パンでいる。
僕の大好きな季節が、名残惜しむように、南へ帰らずにいる。
嬉しいようで、もう、十分かなって思う。
季節が変わるときの切ない感じを味わえなくて、
身体のリズムが狂っているのか、
朝、瞼が重い。身体がだるい。そして無性に眠い。
寒いのは苦手で、だんだん厳しさを増していくような気がするのは、
自分が一番安定する方へ向かおうとするせいかもしれない。
僕を形成する細胞が記憶する生まれる以前の自分へ
帰ろうとしているからかもしれない。
なんとなく、来たことがあるような場所、見たことがあるような風景、
食べたことがあるような味、この感じ、これが僕の遠い記憶、、
帰ろう。
懐かしいあの場所へ。
そう思ったとたん、季節は突然方向を変えて、北からの使者を連れてくる。
僕は、きっと疲れている。
全てに疲れ果てている。
夏は終わる。
それは、いつか果てる命のように、
永遠には続かない。
そんなことはわかっているのに、わかっているはずなのに、
僕はまだ、夏の装いを捨てられずにいる。
いつ眠りに落ちるのかがわからないように、
いつ着替えればいいのかわからない。
いつこの人生が終るのかわからないように。
気が付けば、僕は世の中から少しはずれた道を歩いていた。
もう戻ることはできないんだな。
戻るつもりもないけど。
冬になれば、また夏を求めて南の国へ逃避しよう。
「もう帰ってこないからね」
いつもと同じ言葉を残して。

by ten2547 | 2004-09-25 01:09