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耐性 免疫 心拍数

自分は強い人間ではないが、それほど弱いとも思ってなかった。
涙もろいが、冷たい心も持ち合わせていて、自分でもびっくりするくらいドライな面もある。
ほんとは修羅場を演じて、雨に打たれながら去っていく恋人に叫んでみたいと思いつつ、あっそ、じゃ、さよなら。って2秒で回れ右していたりする。多少の後悔くらいあるだろうに、未練だって感じるだろうに、気付いたら小走りに駅に向かってる。
前に、かなり前に言われて、とても印象に残った言葉。「あなたは本当に人を好きになったことがない」って。最初は反発ようと思ったが、なるほどなって納得もした。
別に恋愛に限ったことではなく、つまらないものに愛着を持ちつつ、宝物をあっさりと捨ててしまったり、こだわりがあるようで一貫性がなく、単に気まぐれで我儘とも言えるし、やっぱり感情が安定していないのかもしれない。
そんな僕が、ドキドキするもの。愛でもなく恋でもない。年のせい、は少しあるだろうけど、今朝、感じた嫌な胸の鼓動は、ストレスに対する防衛本能なのかもしれない。たった1通の電子メールに僕のやる気は失せ、身体中の細胞が暴走し始めたような感覚に陥る。弱い。自分はなんて弱いんだ。こんなこと、何でもない。そう思っても、心臓が暴れている。

風邪も引かず、健康診断でも引っかからず、でも健康じゃない。何かに対して耐性が欠如している。免疫力が低下している。病気ではない。それは気分に近いかもしれない。
血圧も、体脂肪も、コレステロールも、何一つ文句なくても、僕は不完全なのだ。
あの心拍は、この先の自分を暗示している。きっと心臓なのだ。ここがイチバンの弱点なのだ。たとえではない。心臓の機能の話だ。何億円もする最新の医療機器でもわからない、小さな崩壊が始まっている。

受話器を上げて、電話した。別に僕が詫びる必要もないのだけれど、形式的に頭を下げた。それですべて丸く収まる。そういう世の中なのだ。いつも人に頭を下げていると、逆の立場になった時、相手の頭をむんずとつかんでもう15度押し下げたくなる、なんてことは滅多にないが、怒りの感情を抑えることがいかに身体に良くないかを知る。怒りはわかり易い感情である一方、刀の納め時と後始末が難しい。アメリカ人にはわからない、微妙なフォローが、次のステップにとってとても大事だ。そんな小手先の技ばかり身についても、電話の向こうの相手にはきっと見えている。僕の頭がちゃんと下がってないこと。

要するに「度胸」の問題なんだろう。ハッタリとか、まあそんな感じ。誠実とはほど遠い「演出」が時には必要だ。弱さとか、自信のなさとか、知識不足とか、全て包み隠すように胸張って、足踏ん張って、虚勢でもいいじゃない、相手が安心するなら、僕の鼓動が正常に戻るなら。
だから、怒らずに、冷静でいよう。そう思えば思うほど、自分の弱さを実感した。

だからって会社休んだりしない。明日も「真面目に」働こう。
誰のためでもなく、自分のために。そうかな。そうだ。
どんなトラブルも、困難も、クレームも、ヒステリーも、笑って受けようじゃない。
それは強さじゃなく、諦観に近いけれど、後ろ向きじゃない。って思い込み。
大したことないさ。どんなことでもやがては解決する。
どんな嫌な相手でも、いつかはその命を終える。
この僕も、それは同じなんだから。

僕のDNAの頑固さにくらべたら、僕なんて素直なもんだ。
オマエとは、一体あと何年付き合うことになるんだろう。
僕をこうまで苦しめるオマエは、あの日、まるで突然変異のように、
鏡に映る僕の姿を「化け物」に変えた。
どこかで読んだ有名な小説のように、目覚めた僕は変身していた。
それを運命なんて陳腐な言葉で飾り付けて受け入れるのに10年かかった。
それに比べれば、オバハンのお小言なんてハナクソみたいなもんじゃない。

慰めにも、励ましにもならない、僕流の僕へのエール、贈りました。

ありがとさん。

by ten2547 | 2004-12-06 23:12