路上より

おいらはノラ。
野良犬のノラ。名前はない。
いつから野良ってるかって?さあ、多分生まれた時からだと思うな。パパやママのことは覚えてない。
何だか知らないけど一年中暑いこの国で生きることになったんだ。寒さに震えたりすることはないし、食べるものは何とか手に入るからね、まだいい方なのかも知れない。野良にいいも悪いもないんだろうけど。
周りには同じ野良仲間がいていくつかの縄張りに分かれてる。よそ者が来た時はみんなして吠えまくるんだ。特にムカつくのがきれいな身なりをして首に輪っかをしている奴らだ。ちょっと前までは見たこともなかった奴らが最近増えてきたんだ。必ずご主人様に連れられてて、自由はないけどいい暮らしができるらしい。ボスの話によると人間のペットなんだと!それって飼い犬ってことだろ!
おいらは腐っても犬だ。自由を捨ててまで人間に飼われるなんてまっぴら御免だ。だけどどうして同じ犬なのにこんなに格差があるんだろう?ちょっと嫌なことや辛いことがあると、何不自由なく過ごしてる奴らが羨ましく思えるんだ。奴らと話したことはないけど、あっちはあっちで不満があるのかも知れない。どっちにしても自分で選んだ道じゃない。ボスの話だと時々奇跡的に野良からペットに転進することがあるそうなんだけど、人間っていうのは気まぐれでわがままだからね、その逆もあるんだ。それは悲惨の極みだね。
最近気付いたんだけど、人間にも野良がいるんだな。この国は暖かいから高速道路の下でだって眠ることはできる。雨露さえ凌げればいいってことだよね。おいらの縄張りに汚らしい爺さんが寝泊りしてるんだ。この爺さん、家はないみたいだけどバイクは持ってるし、一応仕事もしてるみたい。リアカーにぬいぐるみをいっぱい縛り付けて夜の繁華街へ売りにいくんだ。でもさ、誰が買うんだろう、あんなものって思ってたんだけど1個か2個は売れるみたいで、毎日大事そうにビニール袋に詰め込んでいるよ。昼間はずっと寝ていて商売に出かけるのは夜だけ。
そんな生き方もあるんだな。
自分で選んだわけじゃないかもしれないけど、そうやって生きていくしかないんだな。
おいらも、きっとこのまま、ずっと野良として生きていく。
これを運命と言うのだろうか。
これを受け入れることで現世を生き抜き、来世で転生する。
悪いことさえしなければきっと今度は人間にでも生まれ変われるかな...でもやっぱり野良だったりして。
あ、腹減った。いつもの餌場にでも行ってみるか。あそこのガイヤーンの骨っこは最高なんだ。運がよければ時々肉にもありつける。
おいらのささやかなシアワセだ。

今日も平和だった。


※いつかあの海の向こうに行ってみたい。
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by ten2547 | 2009-01-08 23:31 | 旅行